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中山 勝政*; 鈴木 渓
Proceedings of Science (Internet), 430, p.379_1 - 379_9, 2023/04
本来のカシミール効果は連続時空上に存在する量子場から創発する物理現象であり、理論的にも信頼性の高い定式化が達成されているが、「格子」上に定義された空間(例えば、固体の結晶構造など)において、カシミール効果に相当する物理現象を定式化し、その性質を明らかにすることは重要なテーマである。本会議録では、格子上の様々な量子場に起因するカシミール効果の性質に関する近年の研究成果について報告する。まず、格子空間上のカシミールエネルギーを定義し、格子上のフェルミ粒子の一種であるウィルソン・フェルミオンによるカシミール効果が連続時空上のディラック粒子によるものと極めて似た性質となることを示す。さらに、CdAsやNaBiなどのディラック半金属を記述する有効ハミルトニアンを用いた解析により、この系のカシミールエネルギーが半金属薄膜の厚さの関数として振動することを示す。また、電子系に磁場をかけることで生じるランダウ量子化による影響や格子上の非相対論的量子場によるカシミール効果の性質についても報告する。
青木 慎也*; 青木 保道*; 深谷 英則*; 橋本 省二*; 金森 逸作*; 金児 隆志*; 中村 宜文*; Rohrhofer, C.*; 鈴木 渓
Proceedings of Science (Internet), 396, p.332_1 - 332_7, 2022/07
高温QCDにおける軸性U(1)異常の振る舞いはQCDの相図を理解するために重要である。JLQCD Collaborationによる以前の研究では、ドメインウォール・フェルミオンや(再重み付け法によって得られる)オーバーラップ・フェルミオンのような動的なカイラルフェルミオンを用いて2フレーバーQCDの高温相のシミュレーションを行った。本研究では、このシミュレーションを2+1フレーバー動的クォークを含む系へと拡張する。ここで、アップ、ダウン、ストレンジクォークは物理点近傍の質量をとし、2+1フレーバーQCDの擬臨界温度近傍、あるいはやや高い温度でシミュレーションを行う。本講演では、このシミュレーションから得られたディラックスペクトル、トポロジカル感受率、軸性U(1)感受率、ハドロン相関関数の結果を報告する。
青木 慎也*; 青木 保道*; 深谷 英則*; 橋本 省二*; Rohrhofer, C.*; 鈴木 渓
Proceedings of Science (Internet), 396, p.050_1 - 050_9, 2022/07
量子色力学(QCD)の黎明期においては、グルーオン場のトポロジカルな励起を通して軸性U(1)異常がカイラル対称性の破れのトリガーとなることが期待されていた。しかし、そのような効果を格子シミュレーションを用いて定量的に検証することは近年まで困難であった。本研究では、格子上でのカイラル対称性を厳密に保つフェルミオン定式化を用いて、QCDの高温領域の数値シミュレーションを行った。このシミュレーションでは、格子上のカイラル対称性が満たされていることにより、スカラーおよび擬スカラーチャネルの感受率の中から軸性U(1)対称性の破れに起因する寄与を分離することが可能となる。2フレーバーQCDにおける結果は、 MeVの温度領域におけるカイラル感受率が、軸性U(1)対称性の破れによって支配されていることを示唆している。
青木 慎也*; 青木 保道*; 深谷 英則*; 橋本 省二*; Rohrhofer, C.*; 鈴木 渓
Progress of Theoretical and Experimental Physics (Internet), 2022(2), p.023B05_1 - 023B05_12, 2022/02
被引用回数:8 パーセンタイル:81.66(Physics, Multidisciplinary)量子色力学(QCD)におけるカイラル対称性の自発的破れに関する相転移(カイラル相転移)の秩序変数は「カイラル凝縮」であるが、これと関係した量として、カイラル凝縮をクォーク質量で一階微分して得られる「カイラル感受率」という量が知られており、カイラル相転移を示唆する量の一つとしてこれまでしばしば注目されてきた。しかし、カイラル凝縮やカイラル感受率は軸性対称性の破れとも関係しており、その詳細は未だ明らかでない。本論文は、相転移温度近傍におけるカイラル感受率の振る舞いを調べ、軸性対称性の破れがカイラル感受率にどのように寄与しているかを明らかにすることを目的とする。具体的には、カイラル感受率をディラック演算子の固有値分解を用いた形式で表すことにより、軸性対称性の破れと他の寄与を分離する手法を用いた。2フレーバー格子QCDシミュレーションの結果は、MeVの温度領域におけるカイラル感受率が、軸性対称性の破れに大きく支配されていることを示唆している。特に、connected partは軸性感受率に、disconnected partはトポロジカル感受率と呼ばれる量によって支配されることが分かった。
石川 力*; 中山 勝政*; 鈴木 渓
Physical Review Research (Internet), 3(2), p.023201_1 - 023201_23, 2021/06
カシミール効果は、何らかの粒子のゼロ点エネルギーが2枚の平行平板の存在によって歪められることによって生じる物理現象である。格子上の自由度においては、エネルギーと運動量の分散関係はブリルアンゾーンの範囲で周期性を持つため、それに対応してカシミール効果も変化するはずである。本研究では、ナイーブ・フェルミオン,ウィルソン・フェルミオン,(メビウス・ドメインウォール・フェルミオン定式化に基づく)オーバーラップ・フェルミオンなどの格子フェルミオン系におけるカシミール効果の性質を理論的に調べた。特に、, , 次元において周期境界条件または反周期境界条件を持つ系について系統的な解析を行った。中でも、ナイーブ・フェルミオン,負質量を持つウィルソン・フェルミオン,domain-wall heightが大きい場合のオーバーラップ・フェルミオンなどの系において、奇数格子と偶数格子の間でカシミールエネルギーの大きさが振動する現象が見られた。この振動現象は、高運動量を持つ自由度(ダブラー)の存在に起因している。このような新奇なカシミール効果は、トポロジカル絶縁体のような物性系の実験や格子シミュレーションによって将来的に検証されることが期待される。
青木 慎也*; 青木 保道*; Cossu, G.*; 深谷 英則*; 橋本 省二*; 金児 隆志*; Rohrhofer, C.*; 鈴木 渓
Physical Review D, 103(7), p.074506_1 - 074506_18, 2021/04
被引用回数:12 パーセンタイル:72(Astronomy & Astrophysics)本研究では、格子QCDシミュレーションを用いて190-330MeVの温度領域における2フレーバーQCDの軸性アノマリーの性質を調べる。厳密なカイラル対称性を保つための格子フェルミオンとして、メビウス・ドメインウォール・フェルミオンや再重みづけ法によって構成されるオーバーラップ・フェルミオンを採用する。格子間隔は先行研究より小さい0.07fm程度であり、有限体積効果を正しく制御するために複数の体積でシミュレーションを行う。測定量として、トポロジカル感受率,軸性感受率,メソン/バリオン相関関数におけるパートナー間の縮退などの振る舞いを見る。臨界温度以上のすべての結果は、軸性対称性の破れが統計誤差の範囲でゼロと無矛盾であることを示唆している。クォーク質量依存性の結果は、カイラル対称性の破れと同程度に軸性対称性が回復していることを示唆している。
石川 力*; 中山 勝政*; 鈴木 渓
Physics Letters B, 809, p.135713_1 - 135713_7, 2020/10
被引用回数:10 パーセンタイル:76.76(Astronomy & Astrophysics)本論文では、相互作用のない格子フェルミオンにおけるカシミールエネルギーの定義を世界で初めて提案する。我々はこの定義を用いることで、空間方向に周期境界条件や半周期境界条件が課された1+1次元時空におけるナイーブ・フェルミオン,ウィルソン・フェルミオン,(メビウス・ドメインウォール・フェルミオン定式化に基づく)オーバーラップ・フェルミオンに対するカシミール効果の性質を調べた。ナイーブ・フェルミオンにおいては、奇数個・偶数個の格子に対してカシミールエネルギーが交互に振動するという結果が得られた。ウィルソン・フェルミオンにおいては、格子サイズがの領域で、連続理論のディラック粒子におけるカシミールエネルギーとよく一致する結果が得られた。この結果は、格子シミュレーションによってカシミール効果を測定する際に、ウィルソン・フェルミオンによる格子正則化を用いることで離散化誤差をよく制御できることを意味している。さらに、(メビウス・ドメインウォール・フェルミオン定式化に基づく)オーバーラップ・フェルミオンはトポロジカル絶縁体の表面モードに対応しており、様々なモデルパラメータ依存性も調べた。これらの発見は、対応する格子構造を持つ物性系や、格子上の数値シミュレーションによっても検証されることが期待される。
鈴木 渓; 青木 慎也*; 青木 保道*; Cossu, G.*; 深谷 英則*; 橋本 省二*; Rohrhofer, C.*
Proceedings of Science (Internet), 363, p.178_1 - 178_7, 2020/08
本研究では、の動的なメビウス・ドメインウォール・フェルミオンを含む格子QCDの数値シミュレーションによって、QCDの高温相における軸性対称性、オーバーラップ・ディラック演算子のスペクトル、メソン相関関数に対する遮蔽質量、トポロジカル感受率などの物理量を調べた。これらの中でいくつかの物理量は(格子上の)カイラル対称性の僅かな破れに敏感であるため、そのような物理量に対してはメビウス・ドメインウォール・フェルミオンからオーバーラップ・フェルミオンへの再重みづけを行った。さらに、有限体積効果を検証するために複数の体積でのシミュレーションも行った。T=220MeV以上の高温領域におけるカイラル極限(クォーク質量がゼロの極限)近傍の結果は、軸性U(1)異常の強い抑制を示唆している。
Rohrhofer, C.*; 青木 保道*; Cossu, G.*; 深谷 英則*; Gattringer, C.*; Glozman, L. Ya.*; 橋本 省二*; Lang, C. B.*; 鈴木 渓
Proceedings of Science (Internet), 363, p.227_1 - 227_7, 2020/08
量子色力学(QCD)の高温領域における性質は、カイラル対称性に関するクロスオーバー温度近傍において劇的に変化し、これまでに感受率,トポロジカル感受率,メソンスペクトルなどの物理量が調べられてきた。加えて、そのような高温領域における(核子などの)バリオンスペクトルの性質は、そのパリティ二重項構造に関連して注目されてきた。本研究では、格子QCDの数値シミュレーションによって、バリオンスペクトルにおけるカイラル対称性や対称性について調べる。ここでは、2フレーバーの動的なドメインウォール・フェルミオンを含むゲージ配位を用いて、臨界温度以上の高温相における体積依存性やクォーク質量依存性を検証する。さらに、高温相の相関関数においてemergentに現れる対称性や対称性について議論を行う。
石川 力*; 中山 勝政*; 鈴木 渓
no journal, ,
本講演では、相互作用のない格子フェルミオンにおけるカシミールエネルギーの定義を提案する。我々はこの定義を用いることで、空間方向に周期境界条件や半周期境界条件が課された次元時空におけるナイーブ・フェルミオン,ウィルソン・フェルミオン,(メビウス・ドメインウォール・フェルミオン定式化に基づく)オーバーラップ・フェルミオンに対するカシミール効果の性質を調べた。ナイーブ・フェルミオンにおいては、奇数個・偶数個の格子に対してカシミールエネルギーが交互に振動するという結果が得られた。ウィルソン・フェルミオンにおいては、格子サイズがの領域で、連続理論のディラック粒子におけるカシミールエネルギーとよく一致する結果が得られた。この結果は、格子シミュレーションによってカシミール効果を測定する際に、ウィルソン・フェルミオンによる格子正則化を用いることで離散化誤差をよく制御できることを意味している。さらに、(メビウス・ドメインウォール・フェルミオン定式化に基づく)オーバーラップ・フェルミオンはトポロジカル絶縁体の表面モードに対応しており、様々なモデルパラメータ依存性も調べた。これらの発見は、対応する格子構造を持つ物性系や、格子上の数値シミュレーションによっても検証されることが期待される。
鈴木 渓
no journal, ,
高温QCDにおける軸性U(1)異常の振る舞いはQCDの相図を理解するために重要である。JLQCD Collaborationはドメインウォール・フェルミオンや(再重み付けされた)オーバーラップ・フェルミオンなどのカイラルフェルミオンを含む格子QCDシミュレーションを用いることで、QCDの高温領域の研究を行ってきた。本講演では、ディラックスペクトル,トポロジカル感受率,軸性U(1)感受率,ハドロン相関関数などの結果について報告する。
鈴木 渓
no journal, ,
高温QCDにおける軸性U(1)異常の振る舞いはQCDの相図を理解するために重要である。本講演では、近年の格子QCDの数値シミュレーションから得られた結果、特に、ディラックスペクトル,トポロジカル感受率,軸性U(1)感受率,ハドロン相関関数などの最新の成果について報告する。
青木 慎也*; 青木 保道*; 深谷 英則*; 橋本 省二*; 金森 逸作*; 金児 隆志*; 中村 宜文*; Rohrhofer, C.*; 鈴木 渓; Ward, D.*
no journal, ,
量子色力学(QCD)はクォークとグルーオンの運動を記述する基礎理論である。QCDにおける軸性U(1)対称性は、低温では量子異常の効果で破れているが、QCDの高温領域でこの対称性がどうなるか調べることはQCDの相構造を理解するうえで重要である。本研究では、ドメインウォール・フェルミオンや(再重み付け法によって得られる)オーバーラップ・フェルミオンなどの動的なカイラルフェルミオンを用いて2+1フレーバーQCDの高温領域のシミュレーションを行った。ここで、アップ、ダウンクォークの質量は物理点より重い質量から物理点近傍、物理点より軽い質量領域も含め、温度は擬臨界温度近傍や少し低温側・高温側の温度領域を調べた。物理量として、ディラックスペクトル、軸性U(1)感受率、トポロジカル感受率、ハドロン相関関数の振る舞いについて得られた結果と考察を報告する。
青木 慎也*; 青木 保道*; 深谷 英則*; 橋本 省二*; 金森 逸作*; 金児 隆志*; 中村 宜文*; Rohrhofer, C.*; 鈴木 渓; Ward, D.*
no journal, ,
量子色力学(QCD)はクォークとグルーオンの運動を記述する基礎理論である。QCDにおける軸性U(1)対称性は、低温では量子異常の効果で破れているが、QCDの高温領域でこの対称性がどうなるか調べることはQCDの相構造を理解するうえで重要である。本研究では、ドメインウォール・フェルミオンや(再重み付け法によって得られる)オーバーラップ・フェルミオンなどの動的なカイラルフェルミオンを用いて2+1フレーバーQCDの高温領域のシミュレーションを行った。ここで、アップ、ダウンクォークの質量は物理点より重い質量から物理点近傍、物理点より軽い質量領域も含め、温度は擬臨界温度近傍や少し低温側・高温側の温度領域を調べた。物理量として、ディラックスペクトル、軸性U(1)感受率、トポロジカル感受率、ハドロン相関関数の振る舞いについて得られた結果と考察を報告する。